この町で、昭和のころからつづく
和菓子屋です。
1961年の創業以来、
大きく形を変えることなく、
家業として日々を重ねてきました。
特別なことをしてきたわけ
ではありませんが、
気づけば長い時間が過ぎています。
この町のなかで、
無理のないかたちで続いてきたこと。
それ自体が、この店の
ひとつの在り方のように思っています。
長い時間のなかで受け継がれてきたのは、
レシピだけではありません。
火加減や混ぜ方、ほんの少しの加減。
言葉にしきれない感覚が、
手から手へと伝えられてきました。
今も店に立つ80代の祖母の手には、
そうした記憶が残っています。
この町の味を、そっと支えてきた時間が、
そこにあります。
受け継いできた味を大切にしながら、
ほんの少しだけ
新しい感覚を持ち込んでいます。
大きく変えるのではなく、
昔の隣にそっと置くように。
素材や組み合わせを見直しながら、
いまの暮らしにもなじむかたちを
探しています。
無理のない変化を重ねていくことも、
続けていくための
ひとつの形だと思っています。
店内は広くはありませんが、
ときどき、少し腰を下ろしていかれる方も
います。
冷やしあめを飲みながら、
お菓子ができるのを待つあいだ、
店主と言葉を交わしたり、
そのまま静かに過ごしたり。
ほんの短い時間ですが、
そうしたひと息つく場面も、
この店の日常のひとつになっています。
特別な目的がなくても、
ふらっと立ち寄ってくださる方がいます。
ご近所の方が
日々の延長で寄ってくださったり、
子どもからご年配の方まで、
顔ぶれもさまざまです。
この町のなかの、
通り道のような場所として、
気負わず行き来できること。
そんな関係が、ゆっくりと続いています。
代々つづいてきたこの店を、
大きく変えるつもりはありません。
けれど、何も変えないわけでもない。
受け継いできた味のとなりに、
今の感覚を、ほんの少し添えながら、
この町に合う和菓子を
つくっていけたらと思っています。
ふらっと立ち寄ってもらえる店で
あり続けられたら、
そんなに嬉しいことはありません。
この先も長く、
菓子づくりを続けていけたらと
思っています。